童話物語


向山貴彦/幻冬舎


 荻原作品を読破後、国内ファンタジーにすっかりしてやられた直後にオススメされた作品です。時間の単位が違うので慣れるまでちょっと戸惑いましたが、続きが気になってどんどん読んでしまった。

 主人公、ペチカは唯一の肉親だった母親を亡くした後、教会で働きながらたった一人で生きている女の子です。そんな彼女の前にある日、妖精フィツが現れます。永遠の時間が流れる妖精の世界から地上を研究する為に来たのだというフィツ。妖精らしく、なんの汚れも、恐れも知らない純粋さを持ち合わせてます。が、そんなフィツでも驚くくらいペチカは性格がひねくれていたのです(苦笑)。ペチカ物語にありがちな、健気に耐える女の子って感じではありません。極度の人間不信。でもそれも仕方ないかなーって言うくらい、周囲の環境はひどいものでした。人間ってここまで醜くなれるのかって言うくらい、周りの大人がえげつない。そのせいかペチカをそこまで嫌いじゃありませんでした。さすがに子猫のエピソードは辛すぎたけど・・・。
 でも時々ペチカの行動に表面はかなりのひねくれモノでも、芯は悪い子ではないんだっていうのが分かるというか。ただ素直になれないだけで。どんなに親切にされても疑ってかかることしか出来ないペチカが悲しいです。そんな凍りついた心がどんどん溶け出すように温かくペチカを包み込む、おばあちゃんやオルレア、ハーティ夫婦の存在が読んでて嬉しかった。今までペチカの周りにいた人々がどうしようもない人たちだったためによけいこの人たちの優しさに救われました。

 そしてもう一人の主人公、ルージャン。ペチカの幼なじみ・・・というよりいじめっ子ですね。ペチカが気になって仕方がないのに、顔を見るといじめてしまうって感じの。不器用なやつです。彼もまた、ペチカが逃げるように故郷を去った後、彼女を追って長い旅に出ます。この物語の中で一番変わったのはルージャンじゃないかと思うくらい強く、逞しくなっていきます。最後の方は本とに見事な男っぷりでした。ペチカのために全てを捧げるって勢いが男前です。あまり報われてないけど(笑)。一番怪我が多かったのも彼なのに。この作品、人を痛めつける表現がかなり痛々しくて読んでてちょっと辛かったです。もう、そんな描写いいから!みたいな。というわけで、ルージャンかなり痛めつけられてました・・・。でも全てが終わった後、そんなことも忘れ、ペチカが疲れないようにせっせと塔を降りるルージャンがもう健気で健気で・・・(笑)。そのうち報われると思うから頑張れ〜と思わず応援してしまいそうです。

 妖精フィツは最初は本とにかわいいのですが、ペチカと水門で別れ、その後ルージャンと出会った時にはペチカの影響もろに受けてましたね(汗)。疑い深くなってたり、食べ物や宝物に執着したり。妙に人間っぽくなってました。でもお菓子を抱え込んで放さないところとかはすごくかわいかったです。最後の最後でほろりとさせられました。


 結局物語は戦いが終わってすぐすっぱり終わってしまうので、その後のペチカたちがどうなったのかが気になります。多分幸せに暮らしたんだとは思うのですが、その辺もうちょっと読みたかった。「童話物語」長い物語の一部で、ペチカのその後、なんて話もあるそうなので是非書いてもらいたかったです。

 この作品、挿絵が豊富で、きちんと街単位の地図まで書いてあるので読みやすかったです。本の街・ランゼスとか読んでて面白かった。本を読むためのベンチとか。あとは塔の街パーパスも。ファンタジーはどれもなんですが、こういう設定考えられる人って尊敬してしまう。挿絵はカラーで何枚も入ってますが、それが物語と妙にはまってるような気がして気に入ってます。



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