たった一人


宮部みゆき/文春文庫「とり残されて」収録



<あらすじ>
主人公、永井梨恵子はある日とある事務所を訪ねる。繰り返し見てしまう夢。それはいつも決まって同じ場所に自分が立っている。その場所とはどこなのか? そこで何があったのか?
彼女はその謎を解くために勇気を奮ってその事務所の前にやってきた。そしてそこで出会ったのが河野修介。彼を巻き込んで主人公自分探しの旅が始まった・・・。


この作品、最初は謎だらけなんですが、だんだんと謎が解けていく感じが面白いです。そんな中に孤独感が漂うというか、謎が解けて行けば行くほど主人公が持っている孤独感が表に現れてくるんです。それがなんとも不思議で、だけどその孤独感が良く伝わってきます。
最後に謎が解けて終わりますが、あまりすっきりとはしません(笑)。いわゆる「自分探し」がテーマの作品でしたが、探していた自分が見つかった後、彼女は大切なものを失ってしまいます。 しかし自分探しの過程において彼女はある種の強さを身につけていました。傍からみれば強さとはいえないかもしれません。彼女がもろかった故のことだと思ってしまうかもしれませんが、彼女は強い決意を持って生きていくのです。

「運命を変えてはいけないなんて戯言だ。それじゃ生きる価値もない」と心のうちで叫びながら。

後からじわじわと感動させられる作品でした。続きが気になる・・・



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