魔術はささやく


宮部みゆき/新潮社


<あらすじ>
主人公、日下守は父が公金横領という犯罪を犯して蒸発した後、母までも亡くし親戚である浅野家に引き取られて暮らしていた。親切な浅野家の人々に囲まれた平穏な日々。それを壊してしまったのがタクシードライバーである叔父、大造の起こした交通事故。相手は死亡。逮捕されてしまった叔父を救おうと守は決心する。そして守は自身も気付かないうちに事件の真相へと迫っていく・・・。


4作目の宮部作品。今回は高校生が主人公とあって読みやすかったです。高校生といってもそこらの高校生よりもはるかに苦労人ではありますが。


この話は登場人物が多いです。最初は名前も出ずに次から次へと謎の人物が現れるので分かりにくい部分もあるんですが、主人公が真相に迫っていくうちにその人たちがどんどん絡んでくるのが面白かったです。登場人物それぞれに焦点があてられているので、それぞれの複雑な心情が良く分かります。なんというか、宮部さんは人の感情を文章にするのが上手いんだなーと思いました。主人公の守の気持ちって当事者にならないと理解できないものだと思いますけどそれが少しだけ理解できたような気になるんですよね。


あと面白かったのが、鍵や金庫の鍵の開け方が事細かに書いてあったこと。確かにあれを詳しく書かないと、守が本当にそういう技術を持っているという事が読んでて分かりにくいですよね。 そこを曖昧にすると現実味がなくなるというか、少女漫画みたいなご都合主義になってしまうと思います。こんなに書いてあって大丈夫なのか、というくらい詳しかったのでなるほど〜と感心しつつ読みました(笑)。10年位前の作品なので今でも通用するかというと・・・しないと思いますけど(したら困る)。

この作品はミステリーですけど、宮部作品はやっぱりただのミステリーとは違うなと感じました。 事件を解決することよりも主人公やその他の登場人物の心情を描くことに重点が置かれている気がします。それから、理由もなく犯罪を犯す人がいない、というか、100%悪い人、救い用のない悪い奴ってのがいないんですよね。それで、犯人を探し出す方も犯人を理解しようとする。だから余計物悲しかったりもしますが、普通のミステリーより救いがあるような気がしました。

こういうミステリーの方が私は好きです。



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