神の守り人 来訪編・帰還編


上橋菜穂子/偕成社


 守り人シリーズ続編。三部作といわれていたこの守り人シリーズですが、4作目、しかも2冊同時の発売です。

 主人公は前3作と同じ女用心棒・バルサ。このシリーズで誰が好きって言えばやっぱり彼女なので嬉しいです。このシリーズ、大抵バルサが旅の途中で人を助けたことによって様々なトラブルに巻き込まれていくのですが、今回は自ら飛び込んだという感じ。タンダとの旅の途中で出会ったタルの民であるチキサとアスラの兄妹。この兄妹から漂う危険の匂い。そのうちにバルサとタンダはこの兄妹の秘密を知ることになります。その秘密故にアスラを殺そうとするロタ王国の隠密、スファルとその部下達から2人を助けることを決めたバルサ。いつもきっぱりとした決断をしてきたバルサですが、今回は自分も事情を飲み込めないまま子どもを見殺しには出来ないという思いからアスラを助けてしまいます。

 スファルの手からアスラを助け、二人で旅をすることになったバルサ。この旅の中で、普段あまり感じることの出来ないバルサの女性としての優しさを見ることが出来ます。女用心棒という職業、そして彼女の生きてきた人生を考えるとそんな女性らしさは見ることが出来なくても当然かもしれないのですが、やはり小さな少女を守ろうとするバルサにどこか母性を感じました。でもこの優しさって多分チャグムの時にもバルサの中にあったものだと思うし、今回助けた子が女の子だからそれを感じただけなのかもしれないのですけど。

 アスラに背負わされた余りにも重過ぎる運命。アスラはその運命に飲み込まれそうになりながらも懸命に戦います。憎い人々を殺すことで自分を助けてくれるカミサマの存在。最初は自分達を救ってくれる存在だと考えていたアスラも、怒りに任せて人を殺してしまうことの恐ろしさを知り、人を殺すことの罪深さと、自分達タルの民を苦しめつづけたロタ人への怒りに苛まれます。怒りに任せて人を傷つけることの恐ろしさを教えたのは兄のチキサとバルサ。自分自身も同じ恐ろしさを知っているバルサの言葉だったからアスラはその苦しみを理解できたのではないでしょうか。「バルサのようになりたい」と口にするアスラの無邪気さと、その内にあるそうなりたいと思う理由、そしてそう言われたときのバルサの気持ちを思うと切ないです。アスラがマーサさんのところに戻れる日がくると思いたいです。

 今回も重たい物語でしたが、ちょっと楽しみだったのはバルサとタンダの関係の進展ですかね(笑)。やっぱり今回も二人は離れ離れになってしまうのですが、そんな中、互いの心配をしあう二人が良いです。互いにとってなくてはならない存在なのだと思わされますし、怪我をしたバルサを介抱するタンダがなにげに幸せそうだったし(笑)。チキサとアスラも気の毒に思うけど、やっぱりバルサを失いたくないと口に出すタンダ、それに応えるバルサ。なにげに第1作からえらい進展じゃないですか?

 今回脇役も結構好きでした。スファル、ヨーサム王、イーハン殿下、マクル、タジルやカイナなどなど。皆自分の役割を果たそうと精一杯頑張っていてそれぞれがかっこよかったです(スファルも最初はアスラを殺そうとしたものの、やはりそれは自分に与えられた役割を果たす為だったわけですし)。

 一応物語のケリはついてますが、まだ続きそうな終わり方でした。あとがきを読むとこのシリーズまだ続きそうな気配が漂ってるのでこれからが楽しみです。どんどん話も広がっていってるし。またゆっくり最初から読み直したいです。


[二幕TOP]  [home]



















SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送