龍は眠る


宮部みゆき/新潮社



<あらすじ>
嵐の晩、東京に向かっていた雑誌記者の高坂昭吾は道端で自転車がパンクしてしまい、途方にくれていた少年、稲村慎司を拾った。一風変わった所のあるこの少年と走行中に出くわした幼児の死亡事故。この事件をきっかけに高坂は慎司の大きな秘密を知ってしまう。
慎司が超常能力者(サイキック)であるという秘密を・・・。


宮部作品をはじめて読みました。宮部みゆきさんの作品は以前から気になっていたのですが、 今まで読まずじまいになっていた作家さんの一人です。久々に古本屋に行って、目に止まったのがこの「龍は眠る」。他にめぼしいものもなかったので買ってみたんですが・・・面白すぎです。続きが気になって仕方ありませんでした。

話の内容的には重たいです。初っ端から死亡事故が起こってしまうし、それに起因して新たな事件が起こり、また別の事件が起こるという・・・。でも事件そのものはすごいトリックがあるとか、大どんでん返しがあるとかそんな感じではありません。この物語の主軸となっているのは、自分がサイキックだという慎司の言葉を主人公、高坂はどう受け止めるのか、ということ。

「信じてよ」と悲痛な叫びをあげる少年。その言葉を信じてやりたい。しかしどうやって信じてやればいいのか。主人公は苦悩しつつも真実を探ろうとします。それを読んでいる自分も彼は本当にサイキックなのかと真実を知りたくてどんどん物語の中に惹きこまれていくようでした。

そんな中で高坂が出会った三村七恵。彼女の存在が高坂を救ったように思えます。彼女と一緒の時、自分はくつろげる。そんな自分の居場所を彼は見つけたのでしょう。それはかつての恋人とは見つけられなかったもので、そのことで深く傷ついていた彼の心が癒されていくように感じました。
高坂は辛い過去を持っている。彼女もまた人とは違う事情を抱えている。だからこそ超能力を持つ少年たちを理解することが出来たのだとではないでしょうか。

宮部みゆきという人は人の心の中を描くのがとても上手な人だなぁと思いました。人の感情のもっと奥には何があるのか。それを掴めた気になるというか。また、超能力者という、体験してみなければ想像もつかないような彼らの感情が、とてもリアルに感じられます。
超能力者、人の感情が読める、と聞くと超人のように感じてしまって、本当にそんな能力があったら命を削るように生きていくことになるだろうということとか、そんな人たちがどんな苦しみを持っているのか、など考えもつきません。
それを考えさせてくれた作品でした。

それから、この人の文章を読んでいると映像が頭に浮かんでくるんですよね。まるで映画を見ているように。
宮部作品、はまりそうです。



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