ステップファザー・ステップ


宮部みゆき/講談社



<あらすじ>
プロの泥棒である「俺」はとある家に侵入しようとしたところを雷に打たれて失敗。眼をさますと目の前には同じ顔が二つ並んでいた。それが「俺」と13歳の双子の兄弟、宗野直・宗野哲との出会いだった。
彼らは両親が二人とも恋人を作って出て行ったといい、「俺」に擬似親父(ステップファザー)になってくれ、と持ちかける・・・。


私の読んだ宮部作品2作目。初めて読んだ「龍は眠る」とあまりに文体が違っていて、本当に同じ人が書いたんだろうか?と思ってしまうほどでした。
「龍は眠る」は少し重たいというか、ずっしりした印象だったのですが、今回は正に軽妙、といった感じで気軽に読めました。登場人物もとても魅力的ですね。なんといってもあの双子。ほんとに13歳か?と思うほど頭の回転が速いです。普通の13歳なら泥棒が屋根から落ちてきたとしても介抱して弱みを握り、擬似親父になってくれ、なんて頼みません。


  ―「嫌だと言ったら?」
    二人は大らかに笑った。「僕たち、あなたの指紋を取っちゃった」
    「ねえ、前科あるんでしょ? まずいよね?」
    「またムショに入るの、イヤじゃない?」
    いっそ死んだ方が、まだましだ。―(27頁より引用)


・・・こんな13歳がいたら怖すぎですιこの部分だけ書いたら怖くて嫌なガキ、と思ってしまうかもしれませんが(笑)、一言一言交代にしゃべる二人はとても微笑ましいし、(いや、実際にされるとイラつくだろうけど:笑)実は素直な子達なんで嫌なガキ、という印象にはならないですね。

「俺」も最初は脅されて仕方なく父親役を演じているのですが、段々と本当の父親のように双子のことを心配し、見守るようになっていきます。
双子の声を聞き分けられるようになり、字を見分けられるようになり。
最初のころは「ガキが二人いる」とかなりひどい言い方をしていたんですが、最後には「俺の双子たち」になっていて、「俺」の双子たちへの愛がひしひしと感じられます。

双子と「俺」の会話が面白いです。だんだんと親子らしい会話になっていく感じがして、読んでてつい顔がほころんでしまいますね。ですが、こうして3人の間に絆が出来ていけばいくほど、いつかやってくるであろう3人の別れを考えてしまいます。

別れが寂しいから、必要以上に親しくならない、と「俺」が双子に告げるシーンや「俺」が双子の親が帰ってきたと勘違いしてしまうシーンがあるのですが、その寂しさが想像できてしまうだけに読んでて切ないです。

結局謎のまま残る事柄もあるし、3人はどうなったのか分からない結末となっていますが、読了後、後味が悪いという事もなく、むしろさわやかな感覚が残りました。この続きが雑誌に掲載されたようですが、文庫化の予定はないそうです。とても残念です・・・読みたかった。
7つのショートストーリーからなってますので読みやすいと思います。
オススメです。



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